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| 華果山ノ石猴之巻 |
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むかしむかし、それは大むかしの事。
常世の中心には須弥山(しゅみせん)という天をも貫(つらぬ)くような
それはそれは高い山が聳(そび)え立っていた。
その周りを広大な海が囲み、東西南北にそれぞれ大きな大陸があった。
その一つを東勝神州(とうしょうしんしゅう)という。
この大陸の一角に傲来國(ごうらい)という國があり、その近海には
「華果山(かかざん)」という鋭い岩山の島があった。
激しい嵐の夜、巓(いただき)の岩間から石の卵が出てきた。
永い年月の経過の中で、風雨にさらされたこの石の卵にやがてひびが入り、
中から妖気な一匹の石猴(いしざる)が生まれた。 |
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剪り文字注釈: ココトウショウシンシュウゴウライコクカカザン イシノタマゴカライットウノアヤシキサルタンジョウ |
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石猴は山麓(さんろく)の豊かな恵みで健(すこ)やかに育った。
梺(ふもと)の山猿達が仲間に加わり、石猴は山猿達と毎日楽しく遊んで暮らした。
ある日の事。
石猴達はいつものように山野(さんや)を駆け巡り、谷川を下って水遊びをしていた。
すると、山猿の長老が途方(とほう)もない事を言い出した。
「オイッ!
誰か滝つぼを潜れるものは居らぬか?」
「んなァ、アホな。
流れで身体(からだ)が潰(つぶ)されちゃうよ」
「もし潜れるものが居れば、そ奴をワシ等の王様にしようではないか」
「おもしれぇ。
ヨォシ! オレが行く」
石猴は大きく息を吸い込むと、威勢(いせい)よく滝つぼめがけ身体を投じた。
流れに揉まれながらも何とか滝つぼを潜り抜けると、目前に洞窟。
それはそれは綺麗(きれい)な光景が広がっていた。
奥の方に立派な楼閣(ろうかく)見えた。
石猴は水から上がると、その楼閣に詰め寄った。
門柱に華果山福地水簾洞洞天(かかざんふくちすいれんどうどうてん)と記されていた。 |
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剪り文字注釈: イシザルキョバクへトビコミ バクリニロウカクヲハッケン カカザンフクチスイレンドウドウテン |
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一通りを目視した石猴は急いで皆(みんな)の所へ戻ると、観たままを語りに語った。
石猴達はいたく気に入ってしまい、そこを根城にする事にした。
「爺さんよォ、さっきの約束を忘れてねぇだろうな?
今日からオレは、ここの王様だぜ」
こうして、石から生まれた石猴は自らを美猴王(びこうおう)と称して、水簾洞での気ままな生活を始めた。 |
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剪り文字注釈: イシザルカカザンノサルタチヲジュウジシ スイレンドウノオサ ビコウオウトアイナリ |
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