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□■ 絵 心 の ま ま に □■




第二章:ボクの部屋

 

第三節:親父手製の机から


 専門学校高等部に進学後、暫くして将来の進路がある程度定まった事は

前章の通りですが、実際にデザイン科へ編入した際は、何もかもが

新鮮そのものでした。

コンパス(磁石ではなく円を描く用具の方)一つ取っても、中学までの

それとは比べ物にならない程、精巧な代物でした。

極小の正円を描くスプリングコンパス, 同長区分するのに用いるディバイダー, 墨などで

細い直線を牽く烏口等が眼に斬新で、それまで使い慣れていたはずの

三角定規でさえ妙に新鮮に感じる程、本当に一つ一つがこの上なく目新しく感じました。

 学校では真新しい製図台が一人ずつ与えられ、それまで水平の天板しか

知らないボク達にとって、角度自在になる事の奇妙さと言ったらそれはそれは驚きでした。

今でこそ、これら全ては当たり前の代物‥‥、と言いますか、PC処理

が主流になっている現在のデザインの現場において、これらはもう遠い

過去の遺物的存在になりつつありますが。

そういった中で、早速ボクの部屋の机もその様にしようと思い立ち、

それまで親父が使っていた机(これも勿論親父の手製)を半ば無理矢理

譲り受け、自分で若干の手を加え、それらしい製図台を作りました。

そもそも親父の机は天板が容易に取り外せたので、“それを上手く使うに限る”と目論んだ訳です。

この机を拝借するアイデアそれ自体は非常に有効な手段でしたが、これまで使っていた壁に

据え付けの机に加え、総面積約一畳半程の新たな机が部屋に備わると、

六畳チョットのスペースは一段と狭くなりました。

『机と寝床でいっぱいじゃ〜ン‥‥』

手製の製図台の上で充分眠れるスペースなのですから、手狭になるのも

当然と言えば当然なのですが。

でもそれなりに優越感があり、教室でも自分の部屋でもデザイン用具三昧の上、それらを使って

色々なものをしたためるのが楽しくて仕方なかった事を、懐かしさと共に

今でも身体が覚えています。

 授業での実習課題は授業中にこなすのですが、帰宅後それを再度この机で復習し、また同課題で

違うものを作るのが日課となっていきました。

そして、将来にイラストレータ−やデザイナーを夢見ていたのです。

 この手製の製図台は一度ボクの部屋から恩師の事務所に移るんですが、

恩師の仕事机よりも大きくて、よく皮肉を言われたものです。

フリーランスのイラストレータ−になった後、切り絵作家の現在もこの机が

ボクのワークスペースです。



 独立してから数年後、今のカミさんと知り合いました。

当時カミさんはデザイン専門学校夜学の学生でした。

「イラストの勉強なら俺ん所に来てすりゃいいじゃん」とボクが誘うと、

カミさんは普通に家に来ては、グラフィックデザインの事やイラストレーションについて

講議したり、時にはボクの仕事の手伝い等をして、その合間にこの机で学校の課題制作をしてました。


                                           2003年7月執筆




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